睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に無呼吸、低呼吸を繰り返す疾患で、1時間あたり5回以上の無呼吸、低呼吸が認められ、昼間の眠気などの症状を伴う場合に睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)と診断されます。
中等症以上の患者さんは成人男性の20%、閉経後女性の10%に及ぶと考えられており、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を患っている方では、さらに高率で合併していることが分かっています。実際に50万人近くの人が、寝るときに空気を送りこむCPAP療法(経鼻的持続用圧呼吸療法)を行なっています。
診断基準
睡眠1時間あたりの無呼吸低呼吸指数
(apnea hypopnea index:AHI)が5以上
- 軽症 5≦AHI<15
- 中等症 15≦AHI<30
- 重症 30≦AHI
AHIに加えて、以下のひとつが存在する。
- ⅰ)昼間の眠気、熟睡感がない、疲労感、不眠
- ⅱ)呼吸停止、喘ぎ、窒息感で目が覚める
- ⅲ)いびき、無呼吸を他人に指摘される
- ⅳ)高血圧、気分障害、認知機能障害、冠動脈疾患、脳卒中、うっ血性心不全、心房細動、2型糖尿病などと診断されている。
睡眠中は自分の状態は分かりませんので、患者さんのほとんどは、ご家族の方に指摘されて初めて眠っているときに無呼吸になっていることに気が付いたとおっしゃいます。
実際には、検査や治療を受けていない潜在患者が多くいる病気です。
睡眠時無呼吸症候群には脳や神経などの異常で呼吸をするための筋肉への指令が行き届かなくなる「中枢型」(CSAS)、肥満などにより気道の上部(喉)が塞がってしまうことが原因の「閉塞型」(OSAS)、中枢型と閉塞型が混ざっている「混合型」があります。
なかでも、空気の通り道である上気道が狭くなることで起きる「閉塞型」が最も多い原因です。首まわりの脂肪が多いと上気道は狭くなりやすく、肥満は睡眠時無呼吸症候群と深く関係していて、扁桃肥大であったり、舌の大きさ、鼻炎・鼻中隔弯曲といった鼻の病気も原因となることがあります。また、あごが後退していたり、あごが小さいことも睡眠時無呼吸症候群の原因となる場合があります。
診断基準にもある通り、昼間の眠気や倦怠感、集中力の低下などにより交通事故や労働災害をひき起こすことが社会的な問題になっており、道路交通法でも重度の眠気症状を呈する睡眠障害者は、免許の更新ができないこととなっています。
また、心臓発作や脳梗塞、高血圧、不整脈、糖尿病、抑うつ状態などの合併症も問題となっています。
ただ、睡眠時無呼吸症候群は、治療で症状が改善する病気ですので、まずは検査を行い、正しく治療していくことで、日常生活の支障や合併症を回避していくことができます。